墓じまいの流れ
近年、都市部や人口密集地での墓地不足や墓地の維持管理コストの増加などで墓じまいを検討する方が急増しています。
そんな最近よく耳にする「墓じまい」とは具体的にどのような事を言うのでしょうか。また、墓じまいを行うためにはどのような手順を踏み、どのくらいの期間がかかるものなのでしょうか。
この記事ではそんな「墓じまい」に関する疑問を解決するため、墓じまいの概要や具体的な手続きの流れについて解説します。
墓じまいとは
墓じまいとは、簡単に言うと今あるお墓に埋葬されている故人の遺骨を取り出し、墓石を解体して更地にすることを言います。
取り出した遺骨に関しては、納骨堂(注1)や樹木葬(注2)に移したり、散骨(注3)や手元供養(注4)などによって供養します。
最もよくあるパターンが、今あるお墓が遠方にあって管理が大変であるため、交通の便の良い納骨堂に引っ越すといった場合です。
(注1)骨壺に入れた遺骨を安置し、管理する建物。都市部にもあるため墓参りがし易く、墓じまい後の遺骨の受け入れ先として選ばれることが多い。
(注2)墓石ではなく、木や花などを墓標にして埋葬するお墓。自然が好きだった故人のために、納骨堂と並んで遺骨の受け入れ先として選ばれやすい。
(注3)遺骨を海や山に撒いて供養する埋葬方法。元東京都知事の石原慎太郎氏がこの散骨によって埋葬されたことで注目された。
(注4)遺骨を自宅の仏壇に安置するなど、身近な場所に保管することで供養する方法。遺骨をアクセサリーにして供養する方法も手元供養にあたる。
墓じまいの流れ
それでは実際に墓じまいをする場合の流れを説明します。
主に次のような順番で進めていきます。
- 親族間で話し合い、同意を得る
- 現在のお墓の管理者に連絡をする
- 納骨先または供養方法を選ぶ
- 自治体にて必要な手続きをする
- 閉眼供養をし、遺骨を取り出す
- お墓を撤去し、更地に戻す
- 受け入れ先に納骨する、または供養する
親族間で話し合い、同意を得る
まずは墓じまいをするにあたって、後々親族間などでトラブルにならないよう、しっかりと話し合いをしましょう。
家族はもちろん、兄弟姉妹や親戚などそのお墓にかかわっている方に了承を得て置くことが必要となります。
その際は、墓じまい後の埋葬方法や供養方法についても相談しておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。
お墓を建てずに納骨堂に入れるのか、または散骨して供養するのか、いやいやもっと近い場所に新しいお墓を建て直すのか。
墓じまい後の供養方法は様々な選択肢があるので、ここでしっかりと今後の方向性を決めておくとよいでしょう。
現在のお墓の管理者に連絡をする
親族間で話がまとまったら、次は今あるお墓の管理者に墓じまいをする旨の連絡をします。
一口にお墓の管理者と言っても、次の表のとおり今あるお墓の状況によって管理者は異なります。
| お墓の所在 | 管理者 |
|---|---|
| 公営墓地 | 自治体、管理組合の長など |
| 民間墓地 | 管理会社など |
| 寺院墓地 | お寺の住職 |
| みなし墓地(共同墓地) | 自治体、地域の長など |
もし、今あるお墓が寺院墓地である場合は、墓じまい＝檀家(※5)をやめるという事です。
いきなり墓じまいをしたいと切り出すのではなく、あくまで相談ベースで墓じまいをしたい理由を丁寧に説明しましょう。
また、お墓の管理者が分からない場合については、まずそのお墓がある地域の役所に問い合わせてみると良いでしょう。
(注5)特定の寺院に対してお布施や会費を支払う事で、その寺院を経済的に支える家。檀家になることで葬式や法事などの供養をしてもらえるというメリットがある。
納骨先または供養方法を選ぶ
今あるお墓の管理者に連絡をしたら、墓じまい後に遺骨をどのように供養するかを決めなければなりません。
なお、管理者への連絡と遺骨の供養方法の選択はどちらが先でも問題ありません。
遺骨の供養方法については、大きく分けて次の５つのパターンがあります。
- 改葬を行う
- 納骨堂に入れる
- 樹木葬を行う
- 手元供養をする
- 散骨する
改葬を行う
墓じまいによって取り出した遺骨を、新しいお墓を建てることによって供養するという方法です。
お墓は残したいけれど、今あるお墓が遠方にあるため管理ができないといった場合に選ばれることが多いです。
新しく建てるお墓については、今あるお墓と同じ宗旨・宗派で合わせることが多いです。
新しく墓石を購入する場合がほとんどであるため、５つの中では一番費用がかかる方法です。
納骨堂に入れる
納骨堂とは骨壺に入れた遺骨を安置し、管理する建物を言います。
最近は都市部にも多く、屋内施設であることがほとんどであるため、墓参りがし易いのが最大のメリットです。
また永代供養墓であるため、納骨堂を関しているお寺や寺院がご遺族に代わって遺骨を管理・供養してもらえます。
この管理・供養の期間については、一般的には節目である33回忌と設定しているところが多いですが、契約で自由に決められる場合もあります。
期間が終了すると、再契約をしない限り合祀(注6)されます。
(注6)合祀（ごうし）。骨壺から遺骨を取り出し、他人の遺骨と一緒に埋葬すること
樹木葬を行う
樹木葬とは、墓石ではなく木や花などを墓標にして埋葬するお墓のことを指します。
大きく里山に遺骨を埋める「里山型」と都市部によく見られる「公園型」に分かれます。
樹木葬も納骨堂による管理と同じく永代供養墓である場合がほとんどで、一定期間後に合祀されるという点も納骨堂と似ています。
近年、墓じまい後の遺骨の埋葬方法として自然志向の方たちに人気です。
手元供養をする
手元供養とは、遺骨を自宅の仏壇に安置するなど、身近な場所に保管することで供養する方法です。
遺骨をペンダントや指輪などのアクセサリーにして供養する方法も、手元供養に該当します。
最近では小さな仏壇や遺影の写真たてに骨壺が付属していたり、一見して骨壺とわからないようなおしゃれな骨壺やぬいぐるみの中に骨壺を入れるタイプなど、様々な形があります。
散骨する
散骨とは、遺骨を海や山に撒いて供養する埋葬方法のことで、元東京都知事の石原慎太郎氏がこの散骨によって埋葬されたことで注目を集めました。
散骨で最もポピュラーなのは、遺骨を海にまく海洋散骨です。
海洋散骨には、業者に依頼をして代わりに散骨してもらう代行タイプや、複数組の遺族が同じ船に乗り合いをして散骨する合同タイプ、船をチャーターして自分たちの家族のみで行うタイプと様々なバリエーションがあります。
なお、散骨について自治体によっては出来ない地域もありますので、事前に調査をしておく必要があります。